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FIRE PROVIDENCE

2012/01/29 00:10
1月28日は初不動でしたが、わが国では18日の観音、24日の地蔵尊と並んで、庶民が信仰するほとけ(尊格)の三大中心尊となっています。

その起源はアチャラ・ナータ=不動なる尊者というインドの尊格であったことと、アチャラという呼称がヒンドゥー教の代表的忿怒尊であるシヴァ神の別称に認められることから、シヴァ神の信仰がそのまま仏教守護の不動明王に変化したという説もあります。

724年にインド僧の善無畏三蔵とその中国人弟子である一行禅師が訳した『大日経』の胎蔵曼荼羅において、不動明王と対になって表われる降三世明王はシヴァ神の要素を基盤にした三面八臂で、その特徴である第三の眼を額中につけ、胸前で両手の小指をからめ合わせる印相を結んでいます。

これを降三世の印、つまり過去・現在・未来にわたり仏教に敵対するものを降伏させることを意味します。

『金剛頂経』の「降三世品」によると、この印を結んで威嚇の真言フーン(吽)を唱えると、外経の王者であるシヴァ神もその妃のウマーも一度に死んでしまったと伝えられています。

それを裏付けるように、お寺の入口の門番となっている仁王とか完全武装した四天王が強さを誇示するために邪鬼を踏みつけているごとく、降三世明王が両足のそれぞれの下にシヴァ神である大自在天とウマーの烏摩妃を踏み敷いている図像が現行の九会金剛界曼荼羅の降三世会に見受けられます。

なお現図と呼ばれて現在流布している胎蔵曼荼羅において、明王の区画である持明院には、中央の般若菩薩をはさんで左右に二体ずつ計四体の明王が配されています。

このうち、向かって右側から不動明王、降三世明王と並び、向かって左側に登場する「勝三世明王」もまた「三世の主宰神である大自在天(シヴァ神)に打ち勝ったもの」という意味ですが、典拠となるべき『大日経』にはなぜか説かれていません。

図像でみると、不動明王と同じ一面二臂で右手に三叉の戟を持ち、左手に三鈷杵をとる姿をしているため、近年インドにおいて発見された三面八臂と一面二臂の二種の降三世(トライローキヤヴィジャヤ)のうちヴァジュラフームカーラに相当するようです。

もともと明王の「明」(ヴィドャー)とは知識であり、密教の真言や陀羅尼も「明」や「明呪」といわれるように、こういう呪力を持った者を「持明者」(ヴィドャーダラ)と称したといわれます。

呪力をもった者たちの王者が明王の原義ですから、明王はすべて密教の尊格であることが大きな特色であり、その大部分が多面多臂で、他の者を威圧するに足る怒りに身を震わせた恐ろしげな姿をしています。

数ある明王の中でも最も重要な尊格が不動明王ですが、成田不動尊や目黒不動尊のような多面六臂は特殊なタイプであり、基本となるべき通形像は人間的な一面二臂の姿をしています。

仏教文献としては、709年に訳出された『不空羂索神変真言経』の第9巻に、釈迦を中心とした観音菩薩の曼荼羅の北側の尊格の一つとして、「北面の西より第一は、不動使者なり。左手は羂索を執り、右手は剣を持し、半跏趺坐す」と掲げるものが不動明王の初出とされます。

剣と羂索は不動明王のシンボルである三昧耶形になっていて、特に貧(むさぼり)・瞋(いかり)・痴(おろかさ)の三毒の煩悩を断ち切る刀剣は、智慧の利剣(するどい刀)ともいわれています。

羂索は、五色の糸をよった繩ですが、鳥や獣を捕獲する狩猟具であって、インドでは、ヴァルナ(水天)や不空羂索観音の持物としてよく知られています。

投げ繩で獲物を捕らえるように、一人もらさず救済し、願い事を空しくさせる事がないことを象徴しています。

『大日経』の胎蔵曼荼羅によると、「真言主(大日如来)の下、南西の方に依って、不動使者あり。慧刀と羂索を持し、頂髪、左肩に垂る。一目にして諦観し、咸怒身にして、猛炎あり。安住にして盤石にあり。面門に水波の相あり。充満せる童子の形なり」と説かれています。

密教の漢訳述語の草分けというべき一行禅師撰述の『大日経疏』では、すでに「不動明王」という呼称が使用され、不動使者よりも積極的に衆生を教化するためには外見上恐ろしい姿をした尊格として「忿怒王」の特色があらわになってきました。

その後、不空三蔵が訳した『底哩三昧耶不動尊聖者念誦秘密法』巻上に「不動は、また自身にあまねく火焔光を出す。すなわち、これ本尊みずから火生三昧に住すなり」とあることから、不動自体が火を生じ、欲望や迷いを焼き尽くす智慧の火になって三昧(瞑想の境地)に住することを意味していたようです。

その光背の迦楼羅炎とは、背後に生じている火炎が、まるで神話上の鳥であるガルーダ(金翅鳥)が羽を広げたような姿をしていることで、インドの有名なヴィシュヌ神(那羅延天)の乗り物でもあります。

この美しく大きな鳥は、蛇(龍)族の天敵であり、多くの蛇族を常食しているので、あたかも煩悩の蛇たちを食べ尽くす智慧の火の象徴です。

不動明王の真言(明ともいう)の中にある阿字は、梵字のアルファベットの冒頭であるとともに、すべての根源を意味し、大日如来の種字(尊格を象徴する梵字)でもあります。

このことから本尊の大日如来が素直に信じない衆生を救済するために、教令輪身といって、恐ろしい姿を仮に現した存在が不動明王であり、それとともに五仏(自性輪身)・五菩薩(正法輪身)に五大明王を対応させて、三輪身の教えを完成させました。

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